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内部統制の整備義務
内部統制整備への流れ
1995年、内部統制が求められるきっかけとなったとされる事件が発覚しました。『大和銀行ニューヨーク支店事件』で、一行員が11年間に渡り無断で財テク取引を行い銀行に11億ドル(当時、ドル=87円換算で957億円)もの多額の損害を生じさせたのです。更に、この事実を事前に知った銀行トップが、組織ぐるみで隠ぺい工作を行なったことが判明し、米国政府から多額の罰金と業務停止、そして米国からの全面撤廃と事態はより深刻化しました。
この事態に株主は、当時の経営陣に対し株主代表訴訟を起こし、会社が受けた損失の総額14億5,000万ドルの賠償を求めました。
この判決では、当時の役員(12人)に対し7億7,500万ドル(829億円)の支払いが命じられました。
この判決は、他の企業役員にも大きな衝撃を与えました。従来は、従業員の違法行為を知らなかった場合は免責されると一般的に解釈されていましたが、本判決では、「危険な取引についての十分なリスク管理(内部統制)を直接の担当取締役は怠ってはならない」と命じたのです。
これは従業員の違法行為を知り放置した場合のみならず、従業員が違法行為を出来ないようなシステム構築をしていない、および監視すべき義務を怠った場合にも、取締役はその責任を負うという先例となり、「適正な会社経営のために、取締役は内部統制整備の義務がある」と裁判所は判断したと言えます。
この判決の結果が、現在の内部統制議論の引き金になっています。
かつては企業不祥事というと、トップの指示のもと行なわれ、問題が発覚するとその責任を実行犯である部長や担当役員に転嫁し、彼等を警察に差し出すことで済まされました。 今日は逆に、いち担当従業員のミスや違法行為により、トップの責任が問われることとなり、辞任や解散に追い込まれるケースが多くあります。
ちなみに『大和銀行ニューヨーク支店事件』は、内部統制システム整備の必要性を語るときに、必ずと言っていいほど事例にあげられますが、『内部統制システム整備義務違反』により、損害賠償を命じられた役員は1人だけです。
あとの11名の役員については、行員からの手紙により事実を知っていたにもかかわらず、期間内に米当局に報告しなかったことによる、法令違反行為を理由に損害賠償が命じられました。つまり、社員の違法行為(『内部統制システム整備義務違反』)ではなく、自分自身の違法行為が問題となったのです。
内部統制の法令化
相次ぐ企業不祥事が発生する中、2006年5月の会社法改正では『内部統制整備の義務化』(※大企業のみ)され、2009年3月期からは金融商品取引法(いわゆる 日本版SOX法)により上場会社(連結子会社を含む)には『内部統制報告書の作成』『内部統制報告書の外部監査』が導入されることとなりました。
※大会社・・・資本金が5億円以上または、負債の合計が200億円以上の会社