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J-SOX法とSOX法の比較
先行する米国SOX法の問題点
内部統制報告制度は、米国、英国、フランス、韓国等の諸外国において、我が国に先行して導入されています。日本版SOX法の導入に際しては、特に米国のSOX法を参考に検討されました。
米国SOX法で多く聞かれた批判が、企業への『過大なコスト負担』です。適用初年度では、経営者及び監査人とも相当の作業時間を費やしました。大企業の中には、内部作業時間が100,000時間を超えるところもあり、多くの会社で当初の見積額の2~3倍の労力と費用を要する結果となりました。
米国SOX法において、過大なコスト負担を強いた主な原因は以下の項目があげられます。
- 制度導入にあたって、経営者向けのガイダンスや評価基準がなかった
- 問題点の改善が予想よりも広範囲にわたり時間を要した
- 内部統制の不備区分の煩雑さ(『軽微な不備・重大な不備・重大な欠陥』の3分類に分類)
- 監査人監査におけるダイレクト・レポーティングの採用
- 財務諸表監査と内部統制監査との担当監査法人等の分離
過大コスト対策
日本版SOX法を策定するに当たっては、上記のような米国SOX法の問題点を十分に考慮し、評価・監査に係るコスト負担が過大なものとならないよう、米国における運用の状況等を検証し、具体的に以下の方策を講じました。
トップダウン型のリスク・アプローチ経営者は、内部統制の有効性の評価に当たって、まず、連結ベースでの全社的な内部統制の評価を行ない、その結果を踏まえて、財務報告に係る重大な虚偽記載につながるリスクに着目して、必要な範囲で業務プロセスに係る内部統制を評価する。
内部統制の不備の区分内部統制の不備を、財務諸表に与える影響に応じ『重要な欠陥』と『不備』との2つに区分することとする。米国では不備を『重要な欠陥』『重大な不備』『軽微な不備』の3つに区分していることから、財務報告への影響等について評価手続がより複雑なものになっているとの指摘がある。
ダイレクト・レポーティングの不採用監査人は、経営者が実施した内部統制の評価について監査を実施し、米国で併用されているダイレクト・レポーティング(直接報告義務)は採用しないこととした。この結果、監査人は、経営者の評価結果を監査するための監査手続の実施と監査証拠等入手を行うこととなる。
内部統制監査と財務諸表監査の一体的実施内部統制監査は、財務諸表監査と同一の監査人が実施することとした。これにより、内部統制監査で得られた監査証拠及び財務諸表監査で得られた監査証拠は、双方で利用することが可能となり、効果的かつ効率的な監査の実施が期待できる。
内部統制監査報告書と財務諸表監査報告書の一体的作成内部統制監査報告書については、財務諸表監査報告書と合わせて記載すことを原則とした。
監査人と監査役・内部監査人との連携監査人は監査役などの監視部門と適切に連携し、必要に応じ、内部監査人の業務等を適切に利用できることとした。
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