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課題と問題
求められるマニュアル
近年、マニュアルを所有する企業は比率は高まり、更に会社法改正により『内部統制整備の義務化』(※大企業のみ)や『金融商品取引法』(いわゆる 日本版SOX法)により、上場企業を中心に業務のマニュアル化は、急速に進んでいます。
その中で、マニュアル内容の質も高いものが求められています。それは、消費者趣向の多様化やグローバル化する企業競争のなか、ただ単に手順を記載した程度のもでは、競争に勝てなくなってしまうからです。
例えば、得意先への営業活動において、マニュアル通りに会社案内やカタログを見せながら、製品や自社の特徴を淡々と説明するのではなく、相手の目の色・顔色から興味のありそうな製品を判断し、その製品に関する項目を重点的に説明する。この程度のレベルを想定したものでなければなりません。
カタログを最初から、左か右へ強弱なく説明をするマニュアルでは、時代遅れのマニュアルといえ、現代の変化が激しく厳しい競争のなかで、顧客の求めに対応ができず、むしろマニュアルが『足かせ』となってしまうこともあります。
マニュアルは常に未完成
完璧であるマニュアルはなく、常に未完成状態だと言えます。なぜなら、企業を取り巻く状況は、常に変化しているからです。
日々変化する市場経済に対応し、企業も、そしてマニュアルも変化しなければなりません。マニュアル事項の実施を徹底させる一方で、マニュアルを『金科玉条』が如く絶対的なものにするのではなく、状況に応じ変化させなければなりません。(決められた手続きのもとに)
マニュアルの運用には、『決めた手法を徹底する信念』と『慣れ親しんだ手法を替える勇気』が必要とされます。
失敗は成功の母
洗練されたマニュアルは、先人が多くの失敗を重ね苦労の末に得た、最も効率的で効果的な方法を集めたもので、企業にとって何よりも替え難いものとなります。これを、次の世代へと受け継いで行くことが、企業の生命線となります。
しかしながら、マニュアルを利用すると、ノウハウやコツを短時間学べますが、逆にいうと、マニュアルで学んでしまえば、失敗を一切知ることが出来ないという欠点もあります。人は失敗から多くのものを学ぶものです。失敗を知らず最も優れた方法だけを学んだ人は、マニュアルから外れた場合どのようになるかを知りません。
「どこまでが限界か、これを超えるとどんな事態になるのか、事態が起きてしまったらどう対処したらよいのか」を知らず、当初は小さな失敗で済まされたが、大型化・大量化により、大きな失敗となる可能性があります。
人は、常に安易な方法へと行きたがり、『これはダメ!』と言われても、「しまった!」「危なかった!」など、自分自身で痛さを経験しないとなかなか理解できないものです。
上記のように、マニュアルにより最良な方法を学んだだけでは危険な側面もありますので、より良い人材育成には、マニュアルに失敗事例を盛り込むことや、熟練者による経験談の講演なども必要とされます。
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